たくさん寝てるはずなのに疲れが取れない?
7〜8時間寝ているのに、なぜか疲れが取れない。
前回の記事では、睡眠時間は「7時間前後」が一つの目安になる可能性があることを紹介しました。
しかし、十分な時間を確保していても、
「朝スッキリしない」「日中に眠気が残る」と感じることはないでしょうか。
それはもしかすると、
“睡眠時間”ではなく“睡眠の質”に原因があるのかもしれません。
では、睡眠の質とは何を指し、
それは私たちの健康にどのような影響を与えるのでしょうか。
睡眠の質とは何か
睡眠の質とは、単に「どれくらい長く眠ったか」ではなく、
・どれだけ深く眠れたか
・途中で目が覚めなかったか
・入眠がスムーズだったか
・朝に熟睡感があるか
・日中に眠気が残っていないか
といった、睡眠の回復効率を含む概念です。
研究や臨床では、
Pittsburgh Sleep Quality Index(PSQI)などの指標で評価されることが多く、
「時間」よりも「主観的満足度」や「睡眠の安定性」が重視されています。
つまり、睡眠は“量”だけでなく“回復の質”が重要だということです。
睡眠の質が健康に与える影響
メンタルヘルスへの影響
2021年のメタ分析では、
睡眠の質を改善する介入は
・うつ症状の軽減
・不安の低下
・ストレスの改善
に効果があることが報告されています。
これは「睡眠の質の改善が、精神状態を因果的に改善につながる」可能性を示しています。
(参考:Improving sleep quality leads to better mental health, 2021)
日中パフォーマンスへの影響
睡眠の質が低い場合、
・注意力低下
・判断力の鈍化
・記憶力の低下
・日中の眠気
が生じやすいことが多くの研究で確認されています。
睡眠不足と同様に、
質の低い睡眠も“脳のパフォーマンス低下”につながります。
身体的健康との関連
レビュー研究では、
・運動習慣
・栄養状態
・生活リズム
と睡眠の質が密接に関連していることが整理されています。
つまり、睡眠の質は「独立した要素」ではなく、
生活習慣全体の反映でもあるということです。
睡眠の質を高める方法
運動習慣
メタ分析によると、
定期的な運動は睡眠の質指標(PSQI)を有意に改善することが示されています。
特に※中等度の運動を継続することで、
入眠の改善や途中覚醒の減少が見られます。
→ 運動は“睡眠の深さ”にも影響する可能性があります。
※中等度の運動
研究で「中等度の運動」とされるのは、早歩きや軽いジョギングのような、ややきついと感じる程度の運動です。会話はできるが、歌うのは難しいくらいの強度が目安とされています。
こうした運動を習慣化することで、睡眠の質の改善が報告されています。
食事と栄養
レビュー研究では、
・果物や野菜の摂取
・食物繊維の摂取
・高品質なタンパク質
が睡眠の質と関連することが報告されています。
食事の質は、睡眠の質とつながっている可能性があります。
睡眠衛生
睡眠衛生とは、
・就寝・起床時刻を固定する
・寝る前の強い光を避ける
・寝室の温度を適切に保つ
・カフェイン摂取を控える
といった、睡眠のための行動習慣です。
レビュー研究では、こうした習慣の整備が
入眠時間の短縮や途中覚醒の減少に寄与するとされています。
健康積立としての睡眠
睡眠時間を確保することは「量の積み立て」。
睡眠の質を整えることは「回復効率の向上」。
時間だけを追い求めても、
質が伴わなければ回復は最大化されません。
睡眠の質は、
生活習慣全体のバロメーターとも言えるかもしれません。
これからは「何時間寝たか」だけでなく、
「どれだけ回復できたか」にも目を向けていきたいと思います。
睡眠の質もまた、健康資産の一部なのです。
参考文献
Kredlow MA, Capozzoli MC, Hearon BA, Calkins AW, Otto MW.
The effects of physical activity on sleep: a meta-analytic review.
Journal of Behavioral Medicine. 2015.
Irish LA, Kline CE, Gunn HE, Buysse DJ, Hall MH.
The role of sleep hygiene in promoting public health: A review of empirical evidence.
Sleep Medicine Reviews. 2015.
St-Onge MP, Mikic A, Pietrolungo CE.
Effects of diet on sleep quality.
Advances in Nutrition. 2016.
Scott AJ, Webb TL, Martyn-St James M, Rowse G, Weich S.
Improving sleep quality leads to better mental health: A meta-analysis of randomized controlled trials.
Sleep Medicine Reviews. 2021.

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